校長通信
ゆくて遥かに
校長通信

2022年4月29日

第200号 校長通信第200号に寄せて

 3代の校長に渡り継続しているこの校長通信ですが(私の場合は必死)、今回200号記念号となりました。第1号が平成30年の4月2日に発行されていますので、ちょうど4年間が経過する中で、200号を迎えたこととなります。第100号は、前々校長先生の今井義明先生(現在長野県教育委員会の教育次長)が、令和2年3月23日に発行された、終業式のご挨拶でした。令和2年3月と言えば、世の中でパンデミックが始まり、高校の卒業式には保護者が出席できず、年度末の終業式や離任式が実施できないという、異例な状況の中にあった頃です。集まることのできない終業式のご挨拶を、今井校長先生は第100号記念号にしたためていたということになります。

 第100号の一部を抜粋すると、次のような言葉が書かれています。

「インフォデミックという言葉を聞いたことがありますか。病気が広い地域で流行することをエピデミック(パンデミックの一段階前の状態)と言いますが、インフォデミックはインフォメーションとこのエピデミックを組み合わせた言葉で、不確かな情報が大量に広がり、問題の解決を遅らせるような状況のことを意味します。トイレットペーパーなどが売り切れたり、「ウイルスにぬるま湯が効くらしい」との噂が流れたり、SNSなどでデマや誤った情報が伝わって社会に混乱が起きていますよね。こうした状況においては、適切な情報に基づいて冷静な対応をし続けていくことが重要です。そのためには、「思考停止」ではなく、「自分自身で考え続ける習慣」を身に付けることも大切。自ら調べ自ら考える、そして、科学的根拠に基づいて自らの行動を選択する、という「自治の精神」を、こういう時にも発揮しようと意識を持ち続けてほしいと思います。」

「生徒諸君も実感しているかもしれませんが、自由といい自治といい、それを実現するのはなかなか難しいものです。例えば、自由が人の不自由の上に成り立っているとしたら、それは自由ではなく、単なる自分本位にしか過ぎません。自由と自治は人類普遍の価値であり、いつまでも実現を目指して努力すべきものです。深志高校は、高校において生徒にそのことを求める、自治の「道場」でもあります。多才で多様な校友たちと切磋琢磨しながら、自分自身の人生を、自分自身の選択で切り開いていく、自身の持てる高いポテンシャルを自ら開花させていくところが、深志生の深志生たるゆえんであろうと思っています。もちろん、そのために必要な支援を、私たち教職員は全力で果たしていくつもりです。」

 4月、一ヵ月をこの学校で久しぶりに過ごす中で、今井校長先生が語った、「自分自身で考え判断する力」「真の自由と自治を求め、自分自身の人生を切り拓いていく力」を身につけていくことに深志の学びの本質があることをあらためて認識しているところです。そして世界の中で、政府により、あるいは戦火により、自由と自治が脅かされている人々が存在していることについて、我々は考え、思い続けなければならないことを痛感しています。

【「縮小とんぼ祭」のこと】

 まもなく開催される中信総体や野球の北信越地区予選を前に、コロナで思うような活動ができないまでも、運動協議会の各部の皆さんは最後の総仕上げに頑張っている姿を目にします。本当に思い残すことなく、無事に大会を迎えることができることを、ひたすら祈るのみです。

一方、多種多様な学芸協議会各部や運動部の活動が存在しているところも本校の特徴です。春に行われる「縮小とんぼ祭」は単なる新入生勧誘のための行事ではなく、50を超える各部活動にとっては、自分たちの興味関心を追究している姿の表現の場ともなっています。学芸協議会の発表の様子は、夏のとんぼ祭と比較すると内容は多少充実感には乏しいけれど、大学のゼミのように、同じ興味関心を持った少人数の仲間が集い、協働しながら自分たちの設定した課題を、調べ、実験し、まとめ、発表する、そんな活動が脈々と受け継がれている様子を見ることができました。

入場者数を制限し、各教室での映像も併用しながら舞台は進行しました。
講堂での舞台や照明は相変わらずしっかり造りこんでいました。

 感染症拡大予防のために、縮小とんぼ祭の開催が一週間延期となり、さらに開催も危ぶまれた中、生徒からも先生方からも、この行事をなくしたくないという思いが伝わってくる数日でした。そんな中、学芸協議会、運動協議会のまとめ役である合同協議会会長が校長と教頭のところへやって来て、どうしても縮小とんぼ祭を開催したいと訴えた姿は印象的でした。自分の興味関心のために突っ走っている人たちをまとめ、舞台装置設置委員会や生徒会各委員会との調整を図ってきた合同協議会会長の「ファシリテーター」としての心の叫びが聞こえた思いがしました。このファシリテーターとしての役割を生徒自身がこなし、その上で生徒の探究的な活動が成立していること、そこに「深志の自治」を見た思いがしました。そして困難を乗り越えようとする生徒たちの努力、それを支え援助する先生方の姿こそ、深志高校の持つポテンシャルではないかと感じた一週間でした。

地学会の流星観察{4月22日} 伝統的な地学会の天体観測も、
感染症対策のガイドラインに基づき行われました。